婚姻関係が破たんしていた場合、不倫相手へ慰謝料は請求できるの?

離婚の慰謝料

不貞行為とは?

「不貞行為」とは配偶者以外の異性と性的関係を持つことです。これは夫婦の貞操義務に違反する行為となり、これを法律上では「不貞行為(ふていこうい)」と読んでいます。

夫婦には貞操の義務があり、夫婦の関係を維持するうえで基本になる義務であると考えられています。(内縁も含め)夫婦であれば、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶことは貞操義務違反となり、この行為を「不貞行為(ふていこうい)」と言います。

日本社会では不貞行為のことを「不倫」若しくは「浮気」と呼んでおり、こちらの言葉の方が使われていることから実感を伴うかもしれません。近年では著名な芸能人の方が,不貞行為による慰謝料請求を争う裁判や離婚調停など様々なニュースで「不倫」「不貞行為」などの、言葉を耳にする機会も多いのではないでしょうか?

婚姻関係が破たんしていた場合はどうなる・・・?

不貞行為の基本概念は「不貞行為とは配偶者以外の異性と性的関係を持つこと」と説明をしました。つまり婚姻中に夫・妻以外の人と肉体関係を持った場合には、原則、配偶者に対して不貞の慰謝料という損害賠償を支払う義務を負うことになります。それだけでなく、婚姻中の人と肉体関係を持った人(不貞行為の相手方=不倫・浮気相手)も、不貞の慰謝料を支払う義務を負う場合もあります。

婚姻関係が破綻していた際は,どうなるのでしょうか?既婚者であることを知らなかった場合や、すでに夫婦間で離婚の話し合いをしていた場合などに、慰謝料を払う責任を負うとすることは妥当なものといえるでしょうか?

今回は,婚姻関係が既に破綻している場合の、不貞行為の相手方(不倫・浮気相手)に慰謝料の支払い義務が存在するのか?実際の事例・判例をふまえて説明いたします。

最高裁平成8年3月26日判決

本判例は、すでに婚姻関係が破たんしている場合には、原則として浮気相手は慰謝料を支払う義務はないとしたものです。

事実

夫と妻は1967年に婚姻し、子どもを二人もうけました。夫婦関係は性格の不一致などが原因で次第に悪くなり、1984年に夫が会社の代表取締役になったところ、財産分与を要求するようになったり、夫の帰宅時に包丁をちらつかせるなど、夫婦関係は悪化しました。

1986年、夫は妻と別居する目的で夫婦関係調整の調停を申し立てました。これに対し、妻は、夫に交際中の女性がいるものと考え、夫の会社に関係する女性に電話で夫との間柄を問いただすなどしたため、夫は妻を疎ましく感じていました。

1987年5月には、夫は自宅を出て別のマンションで一人暮らしを始め、妻とは別居状態となりました。その直前の4月、スナックで働いていた女性は、客として来店した夫と知り合い、夫から妻とは離婚することになっていると聞き次第に親しくなり、夏頃には肉体関係を持つようになりました。10月頃には、マンションで夫と同棲を始め、夫の子供を産みました。

判旨

裁判所が下した判決は以下のようなものになります。

「甲の配偶者乙と第三者丙が肉体関係を持った場合において、甲と乙の婚姻関係がその当時に破たんしていたときは、特段の事情のない限り、丙は、甲に対して不貞行為責任は負わないものと解するのが相当である。」

本判決は、不貞の慰謝料は、「婚姻共同生活の平和の維持」のためのものであるとしました。その結果、婚姻関係が既に破綻している場合に、配偶者の一方と肉体関係を持った場合には、特段の事情がない限り、配偶者の他方に対して不法行為責任を負わないものとし、相手方の不法行為責任の生ずる範囲を限定しました。

まとめ

本件の場合、妻がやや常識に反する行動をしていますが、妻に離婚の意思があったわけではありませんでした。また、夫と浮気相手が肉体関係を持ったのは、別居から3か月未満であるので、浮気相手の存在が夫の家出を決定づけたとみられないこともありません。

そのため、判旨のいうように婚姻関係が「既に破綻」していたといえるかは、極めて微妙な判断だと思われます。

本件では、婚姻関係が破綻していた場合は、不法行為責任は問われませんでしたが、上記のとおり婚姻関係破綻の見極めは微妙な判断であったといえます。もし婚姻関係破綻が認められていなかったときには離婚・慰謝料問題に発展し、今後の人生に重大な影響を及ぼしかねない高額なお金が動くことになります。

そうならない為にも、読者の方々には正しい法律知識を得て、法律の違反行為はせずに日々生活していただきたく思います。

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