海外居住の親と子の面会交流権とは?-国をまたぐ法律問題について-

離婚と子供

仕事の関係などで海外での居住生活を送るケースもあると思います。

海外で国際結婚を行い、子供が生まれた際には二重国籍の子供になる場合もあります。しかし何かしらの事情で離婚に至ってしまった時に、国際結婚の場合の面会交流権はどうなるのか?

海外居住の親と子の面会交流権について、実際の判例をモデルにして解説していきます。

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海外居住の場合は準拠法が問題になる?

国をまたぐ法律問題では、どこの国の法律が適用されるか(どこの国の法律に準拠するか)が問題となります。これを「準拠法」といいます

準拠法は、以前は法例で定められていましたが、改正されて、現在は「法の適用に関する通則法」に規定があります。また、手続きをどこの国の裁判所で行うべきかという問題もあります。これを「国際裁判管轄」といいます

国際裁判管轄については法律上明確ではありませんが、判例により一応の基準が確立されています。さらに、外国の裁判所で得た判決が日本で承認され、効力が認められるには、一定の要件(民事訴訟法118条)を具備している必要があります。

民事訴訟法118条

第百十八条 

外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
(決定及び命令の告知)

e-Gov – 民事訴訟法 –より引用

今回は「準拠法」、「国際裁判管轄」、「フランス判決の承認」の3点が問題となったフランスの裁判所の判決に基づく、父(フランス居住)と子(日本居住)の面会交流についての事例をもとに解説を行っていきます。

京都家裁 平成6年3月31日

フランスに居住する父と、日本に居住する子との面会交流。

本件では、フランスの裁判所の判決に基づく、父(フランス居住)と子(日本居住)の面会交流について、準拠法、国際裁判管轄、フランス判決の承認の3点が問題となりました。

事実

フランス国籍の夫と日本国籍の妻は、1983年12月にフランスで婚姻し、1985年3月に長女(フランスと日本の二重国籍)が生まれました。

妻は、1986年8月ころ、長女を連れて日本に帰国し、夫と別居しました。夫は、1990年1月にパリ地方裁判所に離婚訴訟を提起し、1992年3月に離婚及び長女の親権者を妻とする、パリ控訴院の判決(本件外国判決)が確定しました。


パリ控訴院の判決には、次の要旨の条項がありました。

両親の間において別段の合意がなされない限り、次に定める期間、子を父親のもとに同居させるものとする。
・フランスの学校のクリスマス休暇の前半の期間
・復活祭休暇中の10日間
・フランスの学校の夏休み中、偶数年については前半の期間、奇数年については後半の期間(子の旅費については、いずれも父親がこれを負担することを条件とする)


夫は、1989年11月、妻に対して、長女との面会交流を求める審判を京都家庭裁判所に申し立てました。

半旨

裁判所は、以下のように述べて、本件外国判決に基づく面会交流を認めず、日本国内での面会交流のみを認める審判を下しました。

国際裁判管轄権及び準拠法について

本件は、フランス人の父から、日本人の母に対して、フランス及び日本の二重国籍を持つ当事者間の長女(事件本人)との面接交渉を求める事案であるところ、同事件の国際裁判管轄権に関しては、我が国には特別の規定も、確立した判例法の原則も存在しないが、子の福祉に着目すると子の住所地国である日本の裁判所専属的国際裁判管轄権を認めるのが相当である。

また、準拠法については、法例21条に従い母の本国法と同一である子の本国法の日本法が準拠法である(なお、法例28条1項により二重国籍を持つ事件本人の本国法は、事件本人の常居所である日本であると解される。)

フランス控訴院判決の承認の問題については、離婚等を内容とする訴訟裁判の部分と面接交渉等に関する非訟裁判の部分に区分して判断されるべきものと解する。

面接交渉の具体的方法等について

事件本人は、まだ年令的にも未熟で母との連帯感が強く、自己の意思で行動する社会性に欠けていること、外国語の会話能力が殆どゼロに近いところから、自分の意図を父に理解して貰えないことに強い不安感を抱いているものと認められる。

そして、国内での父との数少ない面接交渉も、結果的には、その不安感を増幅させることになっているものと認められる。

従って、父としては、国内での事件本人との面接交渉を通じて、事件本人の意図を理解し、同人の父に対する信頼関係を徐々に高め、事件本人の生育と外国語能力の発達を待って、同人の自発的意思で渡仏を決心させる努力をすることが必要と考える。

また、父においても、日本語の会話能力を身につけ、事件本人との意思疎通の幅を広げることが望まれる。

そうしてみると、事件本人が渡仏して父と面接交渉することについては、事件本人が小学校を卒業して中学校に進学し、ある程度自主的な判断能力を持ち、外国語の会話能力を身につけた時点で、改めて当事者間で協議して、決定するのが相当であると判断する。

国際裁判管轄権及び準拠法について の編集部-考察

面接交渉に関する外国の非訟裁判の承認について

本項目は弁護士監修のうえ、考察を記載しております。

日本民事訴訟法200条の適用はないと解されるが、条理により、その承認の要件としては、外国の裁判が我が国の国際手続法上の裁判管轄権を有する国でなされたこと、それが公序良俗に反しないことの二つをもって足りると考える。

本件面接交渉申立審判事件について

本項目は弁護士監修のうえ、考察を記載しております。

日本国が専属的国際裁判管轄権を有するものと解されるので、上記フランス控訴院判決の面接交渉に関する判決事項を承認することはできず、当裁判所が同事項について独自の立場で判断をすることになる。

まとめ

本項目は弁護士監修による内容をを記載しております。

本審判は、面会交流の国際裁判管轄権について、子の住所地国に専属的管轄があるとし準拠法については法例21条を適用しました。

第二十一条 不法行為の当事者は、不法行為の後において、不法行為によって生ずる債権の成立及び効力について適用すべき法を変更することができる。ただし、第三者の権利を害することとなるときは、その変更をその第三者に対抗することができない。
(不法行為についての公序による制限)

また面会交流に関する外国判決の承認については、旧民訴法200条(現118条)

第百十八条 外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一 法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二 敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三 判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四 相互の保証があること。
(決定及び命令の告知)

の適用はないとしながら、その承認の要件は条理により、下記の2つであるとしました。

  1. 外国判決が日本の国際手続法上の裁判管轄権を有する国でなされたこと
  2. 公序良俗に反しないこと

その上で、本件では①が欠けるとして、面会交流に関するフランス判決を承認せず、日本における面会交流のみを認めました。

国をまたぐ法律問題では、どこの国の法律が適用されるか準拠法キーポイントになると思われます。またその際には様々な条件や法律が複雑に絡み合う可能性が非常に高いため、弁護士などの専門家に相談しつつ解決を目指すことを編集部ではオススメいたします。